椅子が一脚
桜の木の下に
野ざらしになっていて
自転車で駅に向かう途中
ときどきお爺さんが座っていた
何をするでもなく
ぼんやりと遠くを見ていた
お日さまが優しい日には
今でも座っているような気がするよ
サンダルを履いて 杖を立てて 白いひげで
遠くを見ている気がするんだ
寒くなると椅子だけがさみしく
雪を積もらせていた
春になって桜が咲くと
お爺さんはいつの間にか
その椅子にすわっていて
そんな景色が嬉しかった
桜が咲いた日には
今でも座っているような気がするよ
サンダルを履いて 杖を立てて 白いひげで
桜を見上げてる気がするんだ
お日さまが優しい日には
今でも座っているような気がするよ
サンダルを履いて 杖を立てて 白いひげで
遠くを見ている気がするんだ
木漏れ日の揺れる
お爺さんの椅子から
遠くを見ている気がするんだ