2016年2月15日月曜日

アップルパイ

ぼくは笑った
その瞬間は
悲しくもなく切なくもなく
ただただ可笑しくて笑ってしまった
きっと大丈夫だとなんとなく思った

アップルパイが食べたい
べつに好きではないんやけど
なぜか不思議と
アップルパイが食べたい

少年のようにはにかんで
やせ細った腕でギターを弾いた
ベットに寝そべり
独特のフレーズをするりと弾いた

ぼくは笑った
その瞬間は
いつもみたいに
ただただ可笑しくて笑ってしまった
きっと大丈夫だとなんとなく思った

ありとあらゆるたしなみと
かなしみを知りつくし
未開の地を腕一つで切り開いてきた
海賊のような人
あの日も少年のようなあの目は
怖いくらい輝いていた

アップルパイがたべたい
べつに好きではないんやけど
なぜか不思議と
アップルパイが食べたい

40日間点滴だけを食べて
やせ細った身体にエレキギターを抱いて
ベッドの上でおどけて
どんな顔して会えばいいかわからなかったぼくを
粋なフレーズでけとばした

ぼくは笑った
あの瞬間は
さみしさを越えて
ただただ可笑しくて笑ってしまった
きっと大丈夫だと思いたかったぼくに
きっと大丈夫なんじゃないかと思わせて
かっこいいまま旅立った

ありとあらゆるうれしさと
さみしさを知りつくし
未開の地を腕一つで切り開いてきた
海賊のような人
あの日も少年のようなあの目は
怖いくらい輝いていた
怖いくらい輝いていた

アップルパイがたべたい
べつに好きではないんやけど
なぜか不思議と
アップルパイが食べたい

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